遺留分を請求されたので相談したい
例えば,あなたがご長男で,お父様の遺言には,自分に財産の大部分を相続させる旨の内容が記載されていたとします。
あなたとしては,これまで,親御さんと同居されて介護等の面倒を看てこられ,今後は,お母様と同居して面倒を看ていく予定であるというような場合であれば,自分の親御さんとのかかわりをお父様が評価して,そのような遺言を残されたものと思われることと思います。
他のご兄弟は,それぞれ独立して,それこそお盆と正月位にしか実家には帰ってこないというのであれば,そのような遺言で,自分がお父様の遺産をたくさんもらえることになるのは,ある意味で当然だと思われることと思います。
しかしながら,他のご兄弟は,自分にも相続する権利はあるではないかと思われる可能性もありますし,兄弟間の法定相続分は等しい割合ですので,ある日,遺留分侵害額を請求する旨の内容証明郵便が届く可能性もあります。
遺留分を請求されたという場合,実際にあなたの相続した財産の金額が,他の相続人の遺留分を侵害しているのであれば,侵害した遺留分の金額に関しては,請求に応じて最終的には支払わなければなりません。
しかしながら,請求した方の言うとおりにお支払いする必要はないことも多いのです。
遺留分を請求された場合の対応について,ご説明いたします。
1.遺留分を請求してきた方は,遺留分権利者ですか?
遺留分侵害額請求の通知書(請求書)が届いた場合には,まず,誰から送られてきたものかを確認してください。
遺留分権利者は,配偶者と第1順位,第2順位の相続人に限られます。
第3順位の兄弟姉妹が全ての相続人には遺留分があると誤解して内容証明郵便を送ってくることがありますが,その場合には,遺留分権利者ではないと拒否すればよいことになります。
また,被相続人の生前に,家庭裁判所で遺留分の放棄の許可を受けた方は,当然ですが,遺留分を請求することはできません。
さらには,相続放棄をされた方も,当初から相続人ではなかったとみなされますので,当然ですが,遺留分を請求することはできません。
最後に,相続欠格に該当する,相続廃除を受けた方も相続権を失った立場の方ですので,遺留分の請求はできません。
なお,相続欠格,相続廃除の場合,その方の代襲相続人に関しては,その代襲相続人の方が相続放棄をしていなければ,遺留分権利者となりますので,その点には注意が必要です。
以上,請求した方が,正当な遺留分権利者であるかをまず確認して,遺留分権利者からの請求ではなければ,拒否すればよいのです。
詳しくは【遺留分とは?遺留分を請求できる人やその割合が知りたい】をご参照ください。
2.遺留分の請求は,いつなされましたか?
遺留分侵害額請求権は,相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと,時効により消滅します。
被相続人の死亡後1年以上経った後に,請求がなされたときは,相続の開始(被相続人の死亡)の事実を知らなかったのかということと,遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知らなかったのか(通常は,そのような内容の遺言があることを知らなかったということになります。)という2点を確認し,その両方を知らなかったという場合でなければ,遺留分侵害額請求権は時効により消滅しているという理由で,請求を拒否すればよいのです。
また,被相続人の死亡時から10年を経過すると,遺留分を侵害する贈与等を知らなかったとしても,除斥期間の経過によって請求ができなくなります。
10年経過後の請求であれば,除斥期間の経過で請求はできませんので,請求には応じられませんと拒否すればよいのです。
詳しくは【遺留分の時効についてその中断方法が知りたい】をご参照ください。
3.被相続人の財産は正しく把握できていますか?
遺留分を請求してきた方が,上記2点に関してクリアされているのであれば,遺留分権利者による正当な請求になります。
そこで,実際にその方の遺留分が侵害されているかどうかを確認して,侵害されているのであれば支払が必要となりますし,侵害されていなければ請求を拒否すればよいのです。
遺留分が侵害されているかを計算するためには,まず,被相続人の財産総額がいくらになるのかが分かっていなければなりません。
請求してきた方が,具体的に金額を指定して請求しているのであれば,計算の根拠となる財産の内容と評価がされているはずです。
そこで,その点を確認し,自分が把握している相続財産と異なるものがないか,そして,各財産の評価が正当であるかを調べることになります。
現金や預貯金だけであれば,特に評価が問題となることはありませんが,不動産や美術品・骨とう品等の動産については,価格を幾らと評価するかによって,財産総額が変わってきます。
また,株式等取引相場があるものについては,死亡日の価格で評価するか一定期間の平均額で評価するかによって,金額が変わってきます。
遺留分を侵害しているのであれば,最終的に支払をしなければなりませんので,遺留分を請求された側としては,なるべく低い評価になるように査定等を試みることになります。
詳しくは【遺留分の具体的な計算方法が知りたい】をご参照ください。
4.遺留分算定の基礎財産はきちんと計算できていますか?
被相続人の財産総額が明らかになれば,遺留分を算定するための基礎財産を計算することになりますが,基礎財産の計算の際には,加算すべき財産があります。
具体的には,
被相続人の積極財産の合計額から被相続人の債務額を差し引き,その金額に
- ① 被相続人が相続開始前1年間に贈与した財産
- ② 相続開始前10年間に相続人が受けた特別受益
- ③ 不当な対価をもってした有償行為
の価格を加えて計算することになります。
そこで,生前贈与等がなかったかについて,通帳等の記載や契約書等から調査することになります。
例外的に,あなたが保険金の受取人になっている生命保険を遺留分算定の基礎財産に含めなければならない場合がありますので,生命保険金を受け取っておられる場合には,その金額も明らかにしておく必要があります。
以上のことを調査したうえで,最終的な遺留分算定の基礎財産を確定して,そこから,請求者の遺留分侵害額を計算することになります。
詳しくは【遺留分の具体的な計算方法が知りたい】をご参照ください。
5.遺留分を請求してきた方は,生前贈与を受けておられませんでしたか?
遺留分の計算においては,遺留分権利者に特別受益や不相当な対価をもって有償処分した財産がある場合については,その金額を差し引くことになります。
そこで,請求者の方にもそのような生前贈与がなかったかを調査・確認することになります。
具体的には,不動産の贈与がなかったか,住宅資金等についての贈与がなかったか等を登記事項証明書や預貯金通帳,契約書等を調査することになります。
詳しくは【遺留分の具体的な計算方法が知りたい】をご参照ください。
6.他に遺留分の請求に対して,支払を負担すべき人は,いらっしゃいませんか?
遺留分は請求できる相手と請求できる順番が,民法で定められています。
もし,あなたが,遺言で財産を受け取られているのであれば,まず請求に応じて支払わなければならないものと考えてください。
しかしながら,生前贈与を受けたという立場で,遺留分を請求されているのであれば,自分より後に生前贈与を受けた方がおられるのであれば,その方が先に支払をすることになりますので,そのような方がいないかを調査してください。
また,裁判になっているのであれば,支払について猶予期限をつけてもらうことを裁判所に請求することができます。
無理して支払わなくてよいように,場合によっては支払の猶予期限の請求をすることも検討してください。
詳しくは【遺留分とは?遺留分を請求できる人やその割合が知りたい】をご参照ください。
7.遺留分を請求されたのであれば,相続に強い大阪市・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイに
遺留分は民法で認められた権利ですので,遺留分権利者から正当に請求がなされた場合には,支払を拒むことはできません。
しかしながら,遺留分権利者の請求をそのまま認めて支払う必要はありませんし,通常,遺留分権利者の請求額は,正確に計算して認められる金額より多めに請求されていることが多いものです(請求する側からすれば,少しでも侵害額を多くするために,財産評価を最大限高く見積もることは当然予想されることです。)。
そこで,遺留分を請求されたのであれば,正確な遺留分金額をきちんと計算して,負担する必要のない金額を支払わなくて済むように,相続に強い大阪市・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。